街暦 #5
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
クレーンの鉄柱が暮れにスタッチューと並ぶ、
蒼穹な大通りは早急な要求通りに流れて、
水々黙々と働く人々。
点描みたいな雲は、お馴染みのパレイドリアかシュミクラ現象が静かに賑やかな空。
この風景の謎めいた美しさは、あなたの眼差しの蒼さ。
子どもの頃、風や色で街を眺めていたことを憶えてる。
この橋を渡って、暮色が迫る街にもどる。
八名川稲荷の鳥居の上を仰ぎみる。
夕空に黙って吠える、お狐様の形は雲になる。
帰りの川の黒い水面は街の灯りを映し、
家の近くの陸橋から眺める通りは流れる車の光りを映す。
その橋の上で佇んでみる。
嫌なことがあった今日に黙って吠える、
自我の存在は夜景の一部になる。
みる、というのは能動的ではないが、戦略的に哀しみを癒すつもり、今日という記憶を美しく曖昧にするため。
今日、みえているものがみえていないと、
みえていないものがみえているのあいだに、写真を撮る。
松本力より
街暦
text by Chikara Matsumoto
photo by Tei Erikusa
写真と書簡で往復する #往復写簡
Comments