往復写簡 #64
松本力(写真)←襟草丁(文)
松本力さん
いわゆる規格外の野菜はマーケットには出回らず、場所によっては叩き売りか妥当な値かはわかりませんが、難ありだのB級品だの不名誉な名を与えられ陳列されている場合もあり、そうして明らかに集団から浮くものは浮くものばかりの集団でまとめられ、他方で差異のない山から髭根が真っ直ぐ並んでいる辛くない大根が良いだの髭根が螺旋状に並んでいる辛い大根が良いだのあれやこれやと入念に差異を探して選ぶ、重要視される均一さと僅かに違っていることとが入り乱れ、常に価値観は忙しなく、ただ大根以上にも以下にもならない、形状が突拍子もないほど自動的に見立てが始まり、閃いた瞬間にイメージは縛り付けられ、大根は大根でなくりますがしかし大根として扱われ、変形し変形し変形し、淡々と日常に乗っ取られる道は不可避、ただ、いつか偶然その皓さに戻ることもあるかも知れません。
襟草丁より
text by Tei Erikusa
photo by Chikara Matsumoto
写真と書簡で往復する #往復写簡
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