往復写簡 #28
松本力(写真)←襟草丁(文)
松本力さん
もういいかい。まあだだよ。
あの子がほしい。あの子じゃわからん。
そうだんしよう。そうしよう。
幼い頃のあそびは切なく、あの切なさはきっと私の中の劣等感で、死ぬまで眠ったり目覚めたりを繰り返す劣等感なのだと、今でも感じています。
もういいかい。もういいよ。
かごめ、かごめ、うしろのしょうめんだあれ?
幼い頃のあそびに潜んでいる空恐ろしいイメージは、どこからやってきたのでしょう。勝手に棲みついて帰る気配がありません。私は見つけてあげられたのか。私は見つけてもらえたのか。
黄昏の匂いというのがあって、それは夕飯の支度をする匂いで、ただ、自分の嗅覚で感じ取ったものがイメージの全てであるかは、非常に非常に曖昧です。憶えていないことの方が圧倒的に多いというのも、一種の生存戦略でしょうか。忘却が無意識裡へ薄い膜になって流れてゆくならば、既視感が未来から忽然とやってくることもあるでしょう。
襟草丁より
text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡
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