往復写簡 #66
松本力(写真)←襟草丁(文)
松本力さん
バラバラと上空を浮遊する黒い物体は鳥で、いや待てよ、実は全く違う何かかも知れないと疑ったところであれは鳥で鳥で、そう断言できる理由を問われてもあれは鳥で鳥で鳥で、これまでの経験やら記憶やらと照らし合わせて鳥だと判断しているのだろうがそれは過去の出来事の参照で、現在と未来についても絶対的であるとは言い切れない、としても、あれは鳥で鳥で鳥で鳥で、しかし(だから)、もしももしももしも、と、分岐する電線の数だけもしもの世界を想像したってそれはオレの勝手、意識でお手玉しているようなこの意識は没入し始めると、ただただ外界を遮断したい外界から遮断されたい、どうぞ話しかけてくれるな、イメージや言葉がだいぶだいぶ賑々しくなってくると快楽とも疲労とも言い難い感覚に襲われ、眠りたい眠りたくなってくる、嗚呼、もう、お家へ帰りましょう。ね。
襟草丁より
text by Tei Erikusa
photo by Chikara Matsumoto
写真と書簡で往復する #往復写簡
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