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往復写簡 #44


松本力(写真)←襟草丁(文)



松本力さん


栗鼠は忘れたわけではありません。

食糧の蓄えとして木の実を埋める。何カ所にもわたって埋める。そのうちのいくつか(掘り起こすのを)忘れるから、タネは芽吹き樹はその種を次につなぐ。栗鼠くんが忘れてくれるお陰だね。失礼千万な感想を抱いていましたが、ある研究者の調査結果によると、栗鼠は木の実を念入りに分類し貯蔵しており、つまり、考えなしに埋めているわけではなく、とすると、記憶しているにも関わらず(埋めた内のいくつかを)あえて掘り起こさなかったと言えそうです。

栗鼠は忘れたわけではなかったのです。


過去の情報は上書きされ続け、昔はそうでも今は違う、今はそうでも未来は違う、かも知れない。そして歴史は積み上がる一方、ゆく者にはリアルタイムでも来る者には机上の出来事。世界は刻々と変容してゆきます。わたし、も、栗鼠に対するイメージ、も。


襟草丁より


text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡


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