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往復写簡 #41


襟草丁(写真)←松本力(文)



襟草丁さん


この大鳥居をくぐったのは、人生で三度しかないかも。

海外のアーティストが原宿に行きたいと案内したり、彼らを鳩ノ森神社の溶岩でできた富士塚に連れていったり、仕事でスパイラルへいったり、原宿や北参道、表参道へはいくものの、代々木の原へはいくことがなく。

この人工の森が計画されて、ちょうど百年目。明治、百年といえば、五年前が夏目漱石没後百年、四年前が生誕百五十年。因みに二年前は亡き父が百歳だった。

漱石先生の「夢十夜」が好きで、「百」という数が散りばめられた小説の謎掛けに、先生の悲恋が秘められていると解く人もいる。文豪の筆は、男女のすれ違いの明暗を、だれかの心も照らしてくれているだろうか。

漱石先生が門下生に書き綴った書簡に「功業は百歳の後に価値が定まる」とあるらしい。

嗚呼、百年の計は闘いであり、明治から現代への批判と挑戦がつづいている。

これまた人の説くところ、丸く巨視的に覗き込む、二柱の叉から参道すなわち産道を通り、かがみの真ん中に映る我を滅して宇宙に帰る、再び生まれる時が来る。

だれしも母から生まれ、だれかの母とで「合」う。


もう百年は来ていたんだな。


松本力より


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