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往復写簡 #58


松本力(写真)←襟草丁(文)


松本力さん


空を見上げる、否、空は見上げるものだから、空を見るでも通じるのか、ただそれは地上から空を見ている前提で、仮に宇宙空間それこそ国際宇宙ステーションにいたならば空は見下げるものなのか、そもそも空の定義とは何なのかカーマンラインの内側か、大気圏内を空と考えれば良いのか、その空を仰いで雲を凝視していたら口笛を吹く猿に見えてきて(猿って口笛を吹けるのか?)、この雲を何かに見立てている状態は顔が上を向いている状態で、雲が口笛を吹く猿に見えた話を誰かにしたとしても、やはりきっと顔が上を向いた状態を想像され、語らずとも共有できる共通のイメージは必要で、空は概ね見上げるもので空を見るとは見上げている状態で、ただ、今後人類にどれだけの時間が残されているかは定かでないが、未来永劫空は見上げるものとも言い切れず、空の存在すらあやしく、仮想現実に置換されるか遺物になるか、空は見上げるものだったとあえて指摘する日が来るならば、見上げた空の、その視界が樹木に遮られた場合と建物に遮られた場合の気分の差をどう説明すべきだろうか。


襟草丁より


text by Tei Erikusa

photo by Chikara Matsumoto


写真と書簡で往復する #往復写簡


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