往復写簡 #27
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
あの、芭蕉翁の後ろ姿か。
仰ぎみる、後ろ頭に、光が一筋、のぼってゆくか。
深川の八貧とか、説明板をみて感心をして、振り返って、ていさんに「芭蕉庵はこんなにもたくさん描かれていたんだね!」と話しかけたら、閉園時間でぼくが帰るのを待っていた係の女性だった。はずかしい。
芭蕉庵の跡地は、芭蕉稲荷神社になっている。
そういえば、この公園を散策しただれかのブログを検索したら、深川八貧図だけが、4年前まではひび一つなかったのに、昨年にはひび割れて、いまは割れに割れて赤茶けた絵は消えかかっている。日光が一直線に、この位置に届くのか、なにかの兆しなのか。
そういえば2、昼間は隅田川の川上を眺めている芭蕉さんが、夕方から夜にかけて、清洲橋のかかる川下に向きを変えるという。なんだか、生きているんだな。
気になって撮った写真に、輝く芭蕉さんが、または、着物の裾を優雅に棚引かせ、旅の空を漂う姿として写っていた。伊賀から江戸へ、この深川に蛙たちと、長らく暮らして、どうでしたか。
ぼくもいつか蛙になりますか。
松本力より
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡 #matsumotochikara #松本力 #erikusatei #襟草丁 #arinomiproject #無 #umu #なぜなにもないのではなくなにかがあるのか #whynotnothing #存在 #眼差し #時空 #過去 #現在 #未来
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