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往復写簡 #73


襟草丁(写真)←松本力(文)



襟草丁さん


シトロンの月はミカンの一房のよう、

アズールの空はスミレの砂糖漬けを溶かしたよう、

ミエルな家は南蛮菓子のよう、アズキの袴を履いたシベリアのよう、

インディゴな屋根はミルティーユのよう、エクリュな窓はビスキュイのよう、

カラメルな板はヌガーのよう、ノワールな焦げ目はフロマージュ・ブルのよう、


本に紹介されている絵画の配色の美しさが様々な印象を連れてくるよう、

森の老女が空腹な兄妹をもてなすよう、夢の菓子工場の見学ツアーのよう、

お菓子がなければパンを食べればいいじゃないと甘い思い出を懐かしむよう、

そこら辺何でも食べられたらとひねくりまわす錯視と錯覚が魅せる未来のよう、


ブランクな防護柵はメレンゲのよう、

ルージュな円錐形の目印はフランボワーズのショコラのよう、

オランジュな作業着はテノワールのよう、カナリな反射はカフェの光のよう。


松本力より


追伸:なぜか、狂気の菓子工場長役のジーン・ワイルダーの演技が脳裏に浮かんできて、掛け時計も机も椅子も本棚も何でも半分になってる彼の事務室みたいに、この家も切り分けたカステイラみたいになってるんじゃないかっておもってしまった。


text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡


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