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往復写簡 #54


松本力(写真)←襟草丁(文)


松本力さん


ゾウを消化したヘビを描いたのに大人はそれを帽子と言い、しかたなく少年は空洞ーーつまり大人が言う帽子のクラウンに当たる部分ーーにゾウを描きましたが、不明な形についてこれと断定するともうそれ以外に見えなくなるのはよくある事で、ただ他方で詰まるところ個人に蓄積されたデータの域は出られず、出られないからデータ以外の答えを出しようがなく、先の話に戻ると一部分の空間に対してそれを空洞だと考えるか、否その中に何かが存在すると考えるかは解釈次第で、まさに帽子であったとしても奇術師よろしく帽子の内側に鳩を想像したってそれは自由で、例えば何かに覆いがかけられていた時、その覆いの色や質感や装飾ーー例えば鮮やかな山吹色の化繊、縮緬のテクスチャー、縄編みされた糸がU字に連続するレース飾りーーや、外見から窺える内部の重量感等々から覆われているモノを推測したところで、飽く迄も仮定であり仮定ならばゾウでも空洞でもよく、しかし、覆いが外された瞬間!それらは瞬く間に無くなります。


襟草丁より


text by Tei Erikusa

photo by Chikara Matsumoto


写真と書簡で往復する #往復写簡


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