往復写簡 #71 (鎌倉にて)
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
ひきがえるが独り、路で干涸びかけているところを通りかかったことがあった。
一旦は通り過ぎて引き返し、こんな状況に遭遇したからには、だれかがなにかをすべきではないのかという心持ちになった。
それで、その彼か彼女を神社の裏手の地面の断層やら木の根がむき出しになっているところの、斜面に安置したのだけれど。
途端に烏がかあかあ騒ぐので、このままではみつかって食べられてしまうとおもい、目だけのぞいてみえるぐらい落葉をかぶせて隠したつもりだったのだけれど。
かさかさの身体は復活できたのか、すでに死んでいたのか、わからなかった。
映画みたいな魔法の試練を果すために、
地下深くに巣くう大がえると対峙しなければならないような、
車に轢かれる前に急いで道を横断しなければならないような、
空をわたる木の枝のハイウェイを独りでわたっていくような、
生きものの肌の渇きやぬめりやとんがりの陰影が、
ぼくの脳裏に浮かびあがっているのじゃないだろうか。
松本力より
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡
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