往復写簡 #76
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 火を見ると癒されるのはゲノム的で、火と人類の関係は数十万年前まで遡るというから、その火の影響や関わりが遺伝子に組み込まれている論には納得でき、つまり生存戦略としての淘汰の結果とも見え、人類が根本的にそれこそ遺伝子レベルで持っている思...
往復写簡 #75
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん この星を照らす陽光がやってきた、八分の旅の彼方で漣を立てる、核融合の黄色いソップに落とす、秋に映える林檎の輪郭を、螺旋に舞踊る影絵の蛇は、明滅する赤い信号を灯し、目の前の幻想が現実になるような、ないような神話が実在する場所へ、古代宇...
往復写簡 #74
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん わかるひとにはわかるが、わからないひとにはわからず、教えてもらえればわかるし、教えてもらわずとも周囲の反応から予測して答え合わせをして結果わかる場合もあり、そうして学習を繰り返し身体や思考をこの三次元になじませ、つまり記号の交換は必...
往復写簡 #73
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん シトロンの月はミカンの一房のよう、 アズールの空はスミレの砂糖漬けを溶かしたよう、 ミエルな家は南蛮菓子のよう、アズキの袴を履いたシベリアのよう、 インディゴな屋根はミルティーユのよう、エクリュな窓はビスキュイのよう、...
往復写簡 #72 (鎌倉にて)
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 椿は首斬り花とも言い、花の根元からぽとりと落ちて散りますが、私には、同じく花弁がはらはら散るではなく「首斬り」的に散るイメージに夏に花期を迎えるノウゼンカズラがあり、ただそのイメージは、ノウゼンカズラを嫌いと言った母の言葉が結びつけ...
往復写簡 #71 (鎌倉にて)
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん ひきがえるが独り、路で干涸びかけているところを通りかかったことがあった。 一旦は通り過ぎて引き返し、こんな状況に遭遇したからには、だれかがなにかをすべきではないのかという心持ちになった。...
往復写簡 #70
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 脳はその領域のほとんどを予測に使っているそうで、○○ではない○○ではない○○ではない○○ではない○○ではないを繰り返し、つまり消去法によって一つの解「○○である」を導きだすそうで、とすると過去の経験や積み重ねた知識がモノを言うのでし...
往復写簡 #69
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さんへ ああ、やはり、ふしぎだなっておもう。どこかにいっていて、たそがれか、かはだれときに、くもとしょうじょならぬ、くものしょうじょたちの、あおざめたひょうじょうのアニメーションに、なにかをいうでしょう。おもいもがけず、あのたてものは、ぎ...
往復写簡 #68
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 目が合ったと思っているのは私の脳で、目が合ったかどうかも君の視界に何が写っているかも実は知り得ず、君はキミドリ色の体で、キミドリ色に満ち満ちた季節、その姿をその背景色に溶かしますが、ときどき誰かに見つかって、よくよく見ると君は愛くる...
往復写簡 #67
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん ブルーブラックな羽根が、無数の砂粒や礫を盤とした路上の針となって、曇天のアフタヌーンを告げた。或いは、ローアングルなまなざしを生きるだれかの道標となっている。なんだか、既視感があって、#67から#3へ、瞬間移動するような心持ちがする...