往復写簡 #56
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 暗闇が怖いのは、空間が真っ黒、黒に飲み込まれて情報が遮断されるからで、暗闇に目が慣れうっすらとでも状況が把握できるようになれば怖さは軽減され、それは暗闇に限った話ではなく、よくわからないことは怖いし不安であり、逆を言えば怖さや不安に...
往復写簡 #55
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん メヒコのリタさんの家での滞在が終わり、あとは空港に向かうという名残惜しい瞬間に、友人たちの車が動きだしてすぐに、リタさんが何か忘れたみたいで部屋に戻って、ヘッドライトに浮かび上がった門の中で待っていたら、足元の石畳の排水口の蓋がなん...
往復写簡 #54
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん ゾウを消化したヘビを描いたのに大人はそれを帽子と言い、しかたなく少年は空洞ーーつまり大人が言う帽子のクラウンに当たる部分ーーにゾウを描きましたが、不明な形についてこれと断定するともうそれ以外に見えなくなるのはよくある事で、ただ他方で...
往復写簡 #53
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 空港で掲示板がカタカタと動く中に、UZR行きの便があったら? 思わず、目的地を変更して飛び乗ってしまいそうになる かしら? 多分、UZRは西方にある街?人が想像しうる全ては存在しうる?...
往復写簡 #52
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 山と積まれた物物物を前に「詰まるところ資本主義ってどうなのよ」と疑問を呈しつつも、その山の中から一つ二つを手にとり購入する暮らしはシステムに巻き込まれたまま、今住んでいる場所からは建造物の先の先に山が望め、好天日は更に稜線際立ち「山...
往復写簡 #51
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 空間の物体の形象は、人の目からの距離や見る角度の相対的な位置によって変化するのが、可視光線がまっすぐ進んで、物体と空間との境界を眺める地平線に、その表面が消えて見えなくなる輪郭として認識される。...
往復写簡 #50
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 時計など細々した構造のものを分解してみたくて、ただ元通り戻す自信がないので壊れてしまったものならば罪悪感は少なかろうと、動かなくなった機器の蓋を外し、否でも修理できる可能性は0ではないはず、直してみよう積極性は多少なりとも持ちつつ、...
往復写簡 #49
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん マンデルブロー博士に、報告したい。 日本の午後、日射しが照らす、幻のような紅葉にも素敵なフラクタルがあると。 海岸や野菜のかたちではなくて、まさしく、虫食い葉の破れ目の裂けた穴からのぞく向こう側、空との境界の集合だ。そこに、無から眺...
往復写簡 #48
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 写真或いは画像には、当然、外側があります。見る人は、切り取られた内側しか知り得ません。しかし撮影者はその外側を知っています。レンズ越しに、残す残したい残すべき範囲を決めシャッターボタンを押します。切り取られた内側はある種、脚色された...
往復写簡 #47
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 沈む夕日をYou、が眺めてる太陽のよう。 木の上の紅い涙Tomato、昨日への暮れない涙とまると。 Dry tomato is very nice. Try to be nice to you and me. Tomorrow’s...