往復写簡 #52
松本力(写真)←襟草丁(文)
松本力さん
山と積まれた物物物を前に「詰まるところ資本主義ってどうなのよ」と疑問を呈しつつも、その山の中から一つ二つを手にとり購入する暮らしはシステムに巻き込まれたまま、今住んでいる場所からは建造物の先の先に山が望め、好天日は更に稜線際立ち「山はいいねぇ」としみじみ癒されながら、日本の古名は国土の7割くらいが山である事に由来するのか知らんと延々頭の中で独り言を呟き暫し貨幣経済を忘れますが、そもそも「市(いち)」の所以は山でなかったか知らんと横道に逸れてゆくのはさて置き、鞄の中に財布ポケットの中にスマホを忘れないのが現実で、それらがあればある程度はどうにかなる便利さが現実で、台所に籠り創造力を刺激されながら料理し続ける「日」の山が頻繁にやって来るのを単なる物好きと片付ける事も出来ますが、便利さという巨大な山に対する反逆と言えなくもなく、これは自分に都合の良い意味づけと理解の上で、ただ心のバランスを保つ面では都合の良さは大事、山と積まれた矛盾は寧ろ矛盾こそが本質と考える方が自然で、山へ谷へと浮き沈む感情に主導権を握られない為には矛盾と遊ぶに限ります。
襟草丁より
text by Tei Erikusa
photo by Chikara Matsumoto
写真と書簡で往復する #往復写簡
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