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往復写簡 #32


松本力(写真)←襟草丁(文)



松本力さん


どうしたら自転車に乗れるのか、説明は難しい。というか、説明できません。動作としての説明はできますが、あの全体的に平べったい様々なパーツが組み合わされた器具の、ハンドルを掴んでサドルに座ってペダルを漕いで車輪を回転させて、しかしどうバランスをとっているのか、いつしか平然と乗り回していて、謎です。身体的な、感覚的な、特にいちいち確認せず行っている行為や行動ほど、どこがどう機能して関係して一連の動きになっているのか、伝えるのは困難です。とは言え、それらを問われることはまずありませんが。


今日もいろいろの理由で自転車に跨り、走る。住宅地は電線と壁と塀と意図された植物と意図されない植物が混在し、空はそれらに阻まれて、なんだか息苦しい。タートルネックの服から頭をにゅうと出すように、簡単に、障害物のない渺茫たる空を眺められる方法があれば良いのに。にゅうと、首を天に差し出せば、半円球の空。チャリ速度で流れてゆく光景にそんな願望が湧く瞬間があります。


襟草丁より


text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡


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