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往復写簡 #38


松本力(写真)←襟草丁(文)



松本力さん


電線は、どこかの家に渡されてどこかの部屋を照らしています。神経細胞みたように張り巡らされ、多くの家に渡されて多くの部屋を照らしています。


白昼だったか夜だったか、電車に乗って、誰を注視するでもなく乗り合わせた人々を眺め、すべての人に帰る場所があり誰かが待っていたりいなかったり、散り散り電車から降りて家路につくのだと、無数の暮らしの存在が一気に押し寄せてきて、同時に自分もその一部なのだと眩暈したことが幾度もあります。


空は、万国共通です。

遠く離れた場所に住んでいる友人知人とは滅多に会えませんが、彼ら彼女らがそこにいて私がここにいる尊さを、何時の頃からか強く感じるようになりました。空は、失われた故郷とも繋がっています。


襟草丁より


text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡


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