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往復写簡 #60


松本力(写真)←襟草丁(文)


松本力さん


標本や標本が陳列された空間に陶酔するのは、標本や標本が陳列された空間が秘密めいた匂いというか、独特の陰影を持っていて、モノへ向かう知的好奇心だけではない、他者を隔絶させ、知識を得る以外の空想を容易にする因子が放出されていて、ただこの感覚はいつ頃からのどんな刷り込みによるのか、誰でもそうなのか自分だけがそうなのか、独立した時空間へと意識だけが導かれ、つまり物理的時空間は歪み感覚的時空間の奥へ奥へと誘われ、これは標本の一つ一つが独立した時空間そのもので、過去現在未来が分離しながらも混ざり合っているような、多面的に貼り合わされているような、そんな特性ゆえに共鳴しているのか、視覚と視覚野の間で変換される知り得ない時空間の物語が、動くはずのない動きと語るはずのない言葉で脳内銀幕に自動再生され、「私」は「今」骨格標本と白い花を摘みながら歩いている、しかし、瞬間という名の瞬間によってガラスケースという名の興醒めに引き戻されます。


襟草丁より


text by Tei Erikusa

photo by Chikara Matsumoto


写真と書簡で往復する #往復写簡


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