往復写簡 #37
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
差異、差違、差意?御茶の子さいさい。さいってなんだ。意味崩壊しかけている。
そもそも道に文字が書いてあるのは不思議だ。いや、これは文字なの。
橙色の矢印の上に、白色の矢印が書かれているのを見たが、なにを指しているのかわからなかった。¥と左に、立日心。ゲシュタルト崩壊しかけている。
都民劇場という会に入っていたとき、白黒の葉書が毎月送られてきた。
そこにマトリックスと書いてあって、大変評判になった映画だけど、まだ観たことがなかったので、出かけることにした。
九段下の古い建物の中の劇場には、高齢のご夫婦とか、数人しか来ていなかった。
映画の中盤で「青か赤か、どちらかのカプセルを選んで飲め」という場面があって、そこでいきなり真っ白になった。すごいといっていたのは、このことか。
この世界は仮想現実なんだと、途中で終わる映画だ。
じわじわと感動しかけていると、後方から「おかしいぞ!」と声があがった。
新米の映写技師がフィルムを切り替えるのを忘れただけだった。
最近、その映画で主人公を演じていた俳優が、日本のテレビの取材の最後で
「目を覚ませ、サムライ」といっているのをみた。
その映画の続編があるらしいので、出かけようかな。
自分の中に、侍は居るのかどうか。
松本力より
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡 #matsumotochikara #松本力 #erikusatei #襟草丁 #arinomiproject #無 #umu #なぜなにもないのではなくなにかがあるのか #whynotnothing #存在 #眼差し #時空 #過去 #現在 #未来
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