往復写簡 #66
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん バラバラと上空を浮遊する黒い物体は鳥で、いや待てよ、実は全く違う何かかも知れないと疑ったところであれは鳥で鳥で、そう断言できる理由を問われてもあれは鳥で鳥で鳥で、これまでの経験やら記憶やらと照らし合わせて鳥だと判断しているのだろうが...
往復写簡 #65
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 床は天井に、天井は床になって成長する高層マンションの唯一の入居者、月から来て月へ帰った旅人が独り滞在した高層ホテルの部屋の灯り。竹筒の牢獄に囚われた絶世の美女が、竹取りを生業とする翁の元に授けられたという設定で、心に思うことを素直に...
往復写簡 #64
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん いわゆる規格外の野菜はマーケットには出回らず、場所によっては叩き売りか妥当な値かはわかりませんが、難ありだのB級品だの不名誉な名を与えられ陳列されている場合もあり、そうして明らかに集団から浮くものは浮くものばかりの集団でまとめられ、...
往復写簡 #63
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 中国は北京の美しき切り紙の名手、晴娘は天上天下を箒で掃き回る。宇宙無双の式神の術で、照る照るも降れ降れも自由自在のヒトガタは前方後円墳の鍵穴かあるいは壷の形か。漢字のヒ+県=眞の絶望かそれともタロットの吊るされた男の希望のカードか。...
往復写簡 #62
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 明白な違いには敏感で、大きな枠の括りの内に当てはまらないモノコトがどんな世界にも存在し、それらを、他者が好意的に捉えるか或いは嫌悪するか、若しくは当人がひた隠すか自慢気に語るかは状況によって様々で、ただ厳密を言えば同じは存在するのか...
往復写簡 #61
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん この狐面の、ぽっかりと空いた眼窩の奥底にひろがる、蒼さをのぞき込む。 いや、すっぽりと潜った瞳の彼方から放たれる、蒼い光が照らされるのか。 あの埴輪の様、銀毛碧眼の顔が凝視してくる、正体不明な黙音の圧がある。...
往復写簡 #60
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 標本や標本が陳列された空間に陶酔するのは、標本や標本が陳列された空間が秘密めいた匂いというか、独特の陰影を持っていて、モノへ向かう知的好奇心だけではない、他者を隔絶させ、知識を得る以外の空想を容易にする因子が放出されていて、ただこの...
往復写簡 #59
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 夢をみた。夢の中で時を超える。何もおこらなかったのは、何かがおこったあとだからだろうか。その日、その時、その場に戻ることはできないけれど、時間に後先があるのではなく、意味の中に生きてこそ、その後先を再び知ることはできる。その瞬間に強...
往復写簡 #58
松本力(写真)←襟草丁(文) 松本力さん 空を見上げる、否、空は見上げるものだから、空を見るでも通じるのか、ただそれは地上から空を見ている前提で、仮に宇宙空間それこそ国際宇宙ステーションにいたならば空は見下げるものなのか、そもそも空の定義とは何なのかカーマンラインの内側か、...
往復写簡 #57
襟草丁(写真)←松本力(文) 襟草丁さん 白兎を追え、仮想現実を象徴的主題にした1999年の映画の四作目を観に行ったが、1967年産のぼくの20年をも回想して、二兎を追う者は一兎をも得ずならぬ一兎を得た者は二兎をも追えずなのか、韓非子の説話「守株」を黒い鶩たちがうたう唱歌「...