往復写簡 #45
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
歯が痛い、ぐらぐらする。
ぐらぐらしない、古い格子の障子越しの蒼い光に、いつのどこのだれでもない場所に放り込まれた、記念すべきでもない四十五番目の、四の五のいえない、ミニマルな一葉の挑戦状たるコンポジット風景。
図らずも挑んでいる美大の授業で、記念写真の構図には正面切っての最初の挨拶みたいな関係性の始まりがあると話しているけど、意思の力で写っていない光景を、錆びた鉄柵の向こう、藪、林、山をみせてくれているよう。
彼方から呼ぶ声あれば、記憶の中の祖母の家の床の間の向かって左側の明かり障子を明け放って、縁側からの光が暗い廊下に鈍く照り返しているのをみているよう。
真夜中の猫の濁点ある鳴き声に、飛び切りの夜食を用意してあげたり、手から落ちたのが玉子じゃなくて南瓜でよかった、ゴンといったきり、なんでもなかったり。
いま、目の当たりにしている、いつか、ありえたかもしれない現在に、
これからも、いろんな回想がある。
松本力より
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡 #matsumotochikara #松本力 #erikusatei #襟草丁 #arinomiproject #無 #umu #なぜなにもないのではなくなにかがあるのか #whynotnothing #存在 #眼差し #時空 #過去 #現在 #未来
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