街暦 #11
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
緑の中のシルエット。受話器の中に影がある。
電話するなら撮らないけど、撮るなら電話する手が、受話器の中に影が写る。recentでもlatestでもなく、まさしく、green photographの著者近影。この電話機を、街で電話をかけるときより、こんなに間近にまじまじと眺めている。
いまのところ、携帯電話がないから、滞在先の街に到着したと、お店の公衆電話から電話をかけたら、相手は電話にでなかった。公衆電話からの電話は、不気味ででないよ、と。電話をかけるなら、東京を出る前に電話するって電話して、と。会う約束を、電話する約束。
電話するね、とよくいうけれど、何月何日何時何分に電話するね、はおもしろい。
無言電話がよくかかってくる。相手はすぐにきるときもあれば、数十秒だまったままのときもある。
もしもしもいわずに、電話にでてみたら、お互いに一言もしゃべらないまま、通話は終了した。
不穏な空気が漂うのに、なんだか、おもしろかった。
松本力より
街暦
text by Chikara Matsumoto
photo by Tei Erikusa
写真と書簡で往復する #往復写簡
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