街暦 #1
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
クレーンは重たいものを吊上げる、鉄骨とはかぎらずに。
八名川稲荷の美しい暗赤色の屋根瓦の三つ巴の渦を眺めると、自分と自分の中の自分と世界が渦巻く。それが左巻きなのは、人の目で銀河を型に分類する無意識の先入観が反映されているのか、観測者自らの影を観ているのか。
自信がないは、自身がない。それはまずい。だって、無の考察の姿勢は、何もないのではなく何かがあるのだから、自分を信じつづけなければならない。
物語の語り手として、果てしない想像の国の住人が虚無を恐れることと、勇者が鏡に映る他者としての果てある人生の僕らを観ることと、そのどちらの場所にも回帰する責任と必要がある。
自分を観測するような屑籠だけど、誰も彼もが愛想を尽かすまえに、僕はその誰かで、その誰かは僕で、はだかの王様、まっぱの自分が着ているみえない鎧を着るとき脱ぎ捨てるときに、マレー語の音色、カーンじゃなくてゴングと闘いの鐘は鳴る。
中心に向かって堂々と立ち上がるうねりの回転エネルギーが生み出す存在の主体性は、永劫回帰とループしながらも、紆余曲折と新しい局面を迎えられないだろうか。
松本力より
街暦
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡
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