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街暦 #12


松本力(写真)←襟草丁(文)


松本力さん


高校の美術の授業で、大理石の塊をひとつ渡され、「かたち」をよくよく観察してからその起伏というか流線形というかを活かして人の顔を掘るという課題が出ました。デフォルメを学ぶ授業だったのですが、非常に面白かったのを覚えています。

基本的なものづくりのあり方として、「それ」を何かにするのではなく、「それ」を何にするのが効果的かを考えるものづくりに喜びがあって、今になって思い返せば、原点はあのデフォルメの授業あたりにあるのではないかしら。つまり、その食材その服地その物体をどう加工するのが良いのか、自分がどうしたいかではなく、美味しさや模様や形状を最大限引き出すものづくりです。


漱石の著作「夢十夜」の第六夜で若い男が言いました。なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを鑿と槌の力で掘り出すまでだ。

襟草丁より



街暦

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text by Tei Erikusa

photo by Chikara Matsumoto


写真と書簡で往復する #往復写簡

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