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街暦 #3


襟草丁(写真)←松本力(文)


襟草丁さん


ニッとわらう赤い唇の、お稲荷様の眷属は夫婦。

つまり、子連れのお母さんなんだ。

そうとはかぎらない?父子かもしれないし。

その母狐が主婦と兼業で店をやっていたら、赤暖簾をくぐれば「あら、いらっしゃい。今日こそ赤白つけるわよ」と女将の顔で笑いかけてくれる。店仕舞のあとは、夜中までやっている銭湯の暖簾から母子の姿がちらりとみえる。


優しさと精悍さ、伏せと構えの、表情と姿勢のディテールが美しい。この手技は、シルクロードをはるばるやってきた、石工職人団体を起源とする神殿彫刻の流れを汲むような、あるいは逆にたどった、日本の石工物語に想いを馳せて、狛犬熱も弥が上にも高まる。


石屋の裏手の彫りかけの不動明王様が渋い表情をしているのは、石に命が宿る産みの苦しみなのか、方向性を見失った彫り手の苦笑いのそれか、ウインクするような一瞬の映像の一コマを観ている。

そして、僕に向けられた戒めの表情がおそろしい。

後ろ暗いことが、心当たりがあるのかい。


松本力より


街暦

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text by Chikara Matsumoto

photo by Tei Erikusa


写真と書簡で往復する #往復写簡

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