町を掘る #7
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
まさか、こんなかたちになろうとは。
この角度からみえる指揮者は、指揮棒なしの身体を棒に、蒼い背景と電線の五線譜に並ぶ、みえない音符を奏でる。
そのエアコンダクトをぼうと眺めている、心の中の映像で聞こえない声や音楽をきいている。この町のうたもきいていたとおもう。
不夜城のように輝いていたスーパーマーケットの入口で、警備員は車のヘッドライトやテールランプの光芒を指揮するように振るスイングしていた。花売場では、ヒマワリが独り、店員をみつめながら、口ずさむ故郷のうたをきく。
茂みの暗闇の紅い花に、もう帰ったらといわれたようで、ええ、もう帰るところですと、帰路についた途端に、終幕を迎えるのに相応しい、メーンの光を目の当たりにした。
最初の一枚もここだったし、この交差点がなんだか気にはなっていたけれど。その交差点がみえるベンチのうえに、はっきりとわからない、密やかな星が降っていた。
松本力より
text by Chikara Matsumoto
photo by Tei Erikusa
写真と書簡で往復する #往復写簡
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