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町を掘る #5


襟草丁(写真)←松本力(文)


襟草丁さん


モンブランは白い山、を象った白いケーキ。日本のそれは金色の山頂に褐色の玉座があるのが好きだけれど、なかなかおいしいのがない。ないものはつくるが信条だけれど。

モンブランは無理でもマロングラッセならなんとかとなるかなというと、いつもうまくいかない。

やっぱり、茸を入れた栗飯がおいしいね。

いつか、父と母と飯能の山に茸狩りにいった。こんこんと謎の音が鳴り響いて、あれは天狗よと教えられたけれど。

なつかしいな。あの日、恩田川の夕べに、花火の残り火を撮ったら、必然以上偶然未満な「シ」の輝きが浮かんでいたのだけれど、今度は空に雲の「ツ」が浮んでいた。

またしても、類像現象を誘発してくる何者かの何なのか?

ミニマムな謎がマキシマムにひろがっていく。

薩摩藷が不作で、今冬は菓子職人たちが難儀していると、ラジオの人は告げる。小麦が、オクラが、やがて玉蜀黍も枯れると科学者が告げるSF映画を思い出していた。

いつか、生物地球化学的循環のなかで、塵や栗だったぼくらの輪廻転生も、もう今生で終わりかもしれない。


松本力より



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text by Chikara Matsumoto

photo by Tei Erikusa


写真と書簡で往復する #往復写簡

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