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往復写簡 #24


松本力(写真)←襟草丁(文)



松本力さん


朝、起きたらまず、珈琲を淹れます。

寝覚めは良い方ですが、珈琲を飲まないと心身が曖昧というか、居心地が悪いというか、ともかくもシャッキリとしません。加えて、甘いものを少し。両親は毎朝ご飯の前に緑茶で甘いものをつまんでいました。親の習慣は自ずと子の習慣になるわけで、いつしか飲み物はブラック珈琲に変化したものの、朝食前にちょっと食べる甘いものは当たり前の行為として現在に至っています。

日常の日常化されている物事は、ある意味「無」に等しく、注視も分析もされずただただ流れてゆきます。何事かがあった時、一時的に違う環境に置かれた時、いよいよ体調が優れない時、透明の存在が突如明瞭な形となって認識されます。無が有になり、あゝ、と実感するのです。


蝿が一匹、室に入り込んだことに気づき、窓を閉め忘れたかと確認する昼下がり。机の上は相変わらず無秩序に物が散乱しています。日常はいつだって危うい。だからこそ愛しい。


襟草丁より


text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡


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