往復写簡 #25
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
ヘムを縫っていますね。帽子の場合は、ここにワイヤを入れて。
足踏みから工業用からブレード専用やら、数種のミシンが家にあるけれど、縫い手は二人しかいない。
帽子屋の息子なのに、帽子を被らないのはどういうことだといわれて。
帽子は好きなんだけれど、好きな帽子がない。
じゃあ、好きな帽子をつくろうかな。
国際競技大会が開催されている。
日の本の国の、太陽をかたどった真っ赤なしるしは、縦横3対7の長方形の縦の5分の3と決められた白の空間で輝く。この紅白の対照は、心にどんなクオリアを掲げるだろう。
いつのまにか、10、20、30代を過ぎてしまった。
いままでないものは、これからもないかもしれないけどさ、懸命な一アマチュアとして、でも、絵空事じゃなく、だれかと連帯するような世界で、自らの主体性をじゃかじゃか縫いつづけることができたなら。
もう、丸い円盤の溝から解き放たれて、クリムソンな朝焼けからバーミリオンな友人とスカーレットの研究でマゼンタの夕陽に向かってローズな人生をワインレッドの心模様で突っ走りたい。
ラジアンレッドマイカな車体平原に、なぜ、飛んでいる姿のまま墜落したのかは知る由もないけど、甲の体を残し、解き放たれた心で、逆さまの宇宙をアンフライングしていると思う。
松本力より
text by Chikara Matsumoto photo by Tei Erikusa 写真と書簡で往復する #往復写簡 #matsumotochikara #松本力 #erikusatei #襟草丁 #arinomiproject #無 #umu #なぜなにもないのではなくなにかがあるのか #whynotnothing #存在 #眼差し #時空 #過去 #現在 #未来
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