往復写簡 #76
松本力(写真)←襟草丁(文)
松本力さん
火を見ると癒されるのはゲノム的で、火と人類の関係は数十万年前まで遡るというから、その火の影響や関わりが遺伝子に組み込まれている論には納得でき、つまり生存戦略としての淘汰の結果とも見え、人類が根本的にそれこそ遺伝子レベルで持っている思考性や傾向は遺伝子を残す為に選択された遺伝子と言え、数万年数十万年前の戦略と、数万年数十万年後の今この現代の戦略とがどれだけ掛け離れていても、永い永い年月をかけて遺伝子レベルで獲得した感覚は揺るがず、たかが数百年で方向転換できる次元ではなく、乖離は乖離のまま、従ってそのジレンマに抵抗するのは理想に理想するのみで出口はなく、ちぐはぐさを肯定的に受容し寧ろそれを利用する狡猾さに出口はあって、キッチンから消えつつある炎を悲観せず、仮に炎を手放した人間とゲノム的意味がどこへ向かうのか興味は尽きず、focusを促されるままにfocusする時間を問うてみる。
襟草丁より
text by Tei Erikusa
photo by Chikara Matsumoto
写真と書簡で往復する #往復写簡
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