町を掘る #9
襟草丁(写真)←松本力(文)
襟草丁さん
碧のWAVE、蒼い波、午後の波長。
いつかどこかでみた既視感が半端ない。逆立ちするかわりに天地を逆様にしたら、葦の注連縄に、石の四手だった。
波長が合うねわないね、なんてどちらも気軽にいえない、声の調子は、オシログラフの波形やインジケータが乱高下するのではなく、かたちのないうねりを届ける。
カール・ブッセの詩のように、山のあなたの空遠く「幸」住むと人のいふ、山のあなたになほ遠く「幸」住むと人のいふ、場所を記したい地図の上で憶う、今日この頃。
あたたかい気持ちがぶわっとよみがえって、じわっと涙をながす。きみがすきなんだったことを思い出す。
それなのに、帰り道に見上げた長津田の空に、なにが飛んでいたかさえおもいだせない。なんてことはお構いなし、ピンぼけの漂流者は、気まぐれな尾をひく彗星みたいに、いつまでも夜空を上っていくよう。
松本力より
text by Chikara Matsumoto
photo by Tei Erikusa
写真と書簡で往復する #往復写簡
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