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往復写簡 #9


襟草丁(写真)←松本力(文)



襟草丁さん


白菜が宇宙になった。

いつかみた、どこかへと立ち漕ぎでいそいでいた女子みたいな、買い物帰りの疾走する自転車の籠から落ちた一菜がぎうぎうと路に押しつけられて、砂利や埃と一体の銀河になった。ある雨の日には、一名がざんざんと路に押しつけられて、砂利や埃と一体の版画になった。いつかみた、松岡亮さんの個展は書店の天井にみえない路が交差するようにはってあった絵を仰ぎ見て、本棚の都市を逆さまに飛んだ幻覚がみえた。嗚呼、タメイキ。これが黄色い小鳥、ウッドストックの気分、みていた世界だった。


いまみた、ほろ酔い気分の千鳥足で下手下手おどったみたいな、枝葉の切れ目をすり抜けた光球が衝突した干渉縞が空想性錯視だの類像現象だのと未知に押しつけられて、不可知な存在からの不確実な斑模様の伝言を看過してしまう前に、光や埃と一体になった蒼雲の印画になった。目が仰角と俯角の間を彷徨って、⌘R×3で反転した謎があった。


おもうからみるのかな。みるからおもうのかな。


目が紙の隨に漂って、心の影が落とされると、その陰の溝をなぞって、揺れ動いて、みえない眼差しを交して、きこえない声を響かせようとするのかな。


おもうからか、かくのかな。かくから、おもうのかな。


松本力より


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