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往復写簡 #21


襟草丁(写真)←松本力(文)



襟草丁さん


あっつい。

この先になにがあるのかおもうと、気が遠くなる。

子どもの頃、登山した禅庭花が咲き乱れる高原をのぼっていった。あの丘を越えたら天辺だからといわれたけど、その丘からまた次の丘がみえて、どこまでもつづくキスゲの波。

いつもの地下鉄の駅におりていく階段の横に、今年も白い花が咲いていると、夜になって写真を撮りにいった。いつもの眺めだけど、なんだか、もっと前から知っていたようで、それを思い出すのがちょっとこわい。

この畦道も、異界の駅で降りてしまった人が、森からきこえてくる祭り太鼓の響きに誘われてしまうように、たどっていったがさいご、もどってこれなくなると知っている気がする。それでも、自分がみておもって信じるつづけることには、変りはないのかな。


行きて帰りし物語をかたる日がくるかな、きいてくれる人がいるかな。


さよなら三角 また来て四角

四角は豆腐 豆腐は白い

白いは兎 兎は跳ねる

跳ねるは蛙 蛙は青い

青いは惑星 惑星はゆれる

ゆれるは幽霊 幽霊は消える

消えるは電気 電気は光る

光るは地球の丸頭


松本力より


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