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往復写簡 #17


襟草丁(写真)←松本力(文)



襟草丁さん


みえないなにかがもやもやとたちのぼってゆく。

富士の、不二の、不死の山の頂で、月の子が残した思い出を燃やす煙は立ち上り、いまでも、その霞がたなびく荒凉とした山肌には、その目撃者である鉄塔の位置に、一本の木の陰影があって。

いつも、どこか、ここにはいないもの、そこにはないものを、探して、みつけて、写しだす。


それは、空の器に延々と満たすからか、死せる身体に永遠の存在をみたからか。

目は、情報の網目を光の粒子ですり抜けろ、ミクロコスモスの考現学の光画で。

心は、情報の網点を影の粒々で塗りつぶせ、マクロコスモスの現象学の木霊で。

梨は、無しの在り処を応答無用で時を可逆的にたどれ、有りの身の以心伝心で。


だって、外宇宙から遥々飛んできた乗り物の知的生命体より、時間の裂け目を通り抜けてきた電車の隣の女と話すほうが、きっと、確率が高いだろうし、テンション低めな移動の気持ちでも、きっと、信じつづけられるもの。


松本力より


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