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往復写簡 #12


松本力(写真)←襟草丁(文)



松本力さん


実体も概念もすべての存在は、鏡、のようなものではないでしょうか。映すことでわかる。映されることでわかる。嬉しいを通して悲しいがわかる。つまらないを通して楽しいがわかる。ネガティブな感情が厭わしいからと云って、ポジティブな感情だけの世界が訪れたとして、永続的に喜びを喜びと感じられるでしょうか。そもそも幸福感は言語化されるでしょうか。早く終わればいいと願う時間の経験があるからこそ、この時間がずっと続けばいいのにと思う瞬間が際立ち、待ち遠しい日があるからこそ早急に過ぎ去ってほしい日がより憂鬱に感じる。そのものを凝っと眺めていても、そのものの本質にはたどり着けません。だからこそ、常に背景に流れている対比の存在が必要なのではないでしょうか。


わたし、も、然り。あなた、を、通して、わたしがわかる。


白昼の鮮明さに見とれる。夜間の曖昧さに惹かれる。色彩を際立たせる。色調を記憶に委ねる。光から聞こえて来た声は、影と化す外側の出来事でしょうか、想い出の内側の出来事でしょうか。


襟草丁より


text by Tei Erikusa photo by Chikara Matsumoto 写真と書簡で往復する #往復写簡


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